
「Claude Codeを社内で広めたいけれど、エンジニア以外にどう教えればいいか分からない」。
そう感じている情報システム担当者は多いはずです。
結論から言うと、Anthropicが公開した事例によれば、PwCは1時間の研修で400人のコンサルタントにClaude Codeを使いこなせる状態まで導入したとされています。
鍵になったのは、CLAUDE.mdファイルで自動的に起動する「コーチプラグイン」という誘導の仕組みです。
PwCでレガシーシステム・メインフレームの近代化を率いるパートナー、Ussama Baggili氏が主導した取り組みです。
Baggili氏の考え方の軸は「Claude Codeを単なるコーディングツールではなく、有能な同僚として扱う」というもので、この発想が研修設計そのものに反映されているとされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象ツール | Claude Code CLI(VS Code上で利用) |
| 導入時の工夫 | セキュリティ・パッケージ制限を回避するため、インストールを1行のスクリプトに単純化したとされる |
| 誘導の仕組み | CLAUDE.mdファイルでセッション開始時に発火する「コーチプラグイン」(Claude Code CLI内のガイド付きワークフロー) |
| 研修中の課題 | RFP(提案依頼書)への回答、機能・技術仕様書の作成、モバイルアプリの構築の3つ |
注意したいのは、PwCという組織の特殊性です。
大手コンサルティングファームには、専任のパートナーが号令をかけ、全社的な研修インフラを整えられる体制があります。
同じ「1時間・400人」という規模をそのまま中小企業に持ち込もうとすると、うまくいかない可能性が高いはずです。
むしろ参考にすべきは規模ではなく、「CLAUDE.mdで研修フローそのものを自動化する」という設計の考え方だと言えます。
CLAUDE.mdは、Claude Codeがセッション開始時に自動的に読み込むプロジェクト設定ファイルです。
ここに「新人研修用のガイド役として振る舞ってください」「最初にこの3つの課題を順番に提示してください」といった指示を書いておくと、参加者がプロンプトの書き方に迷わなくても、Claude自身が次の一歩を提案してくれる状態を作れます。
PwCの事例における「コーチプラグイン」は、この仕組みをさらに整理してスキル・プラグインの形にまとめたものと考えられます。
PwCの研修が3つの課題(提案書・仕様書・モバイルアプリ)すべてに15〜20分という具体的な制限時間を設けていた点は参考になります。
抽象的な説明を聞かせるより、時間を区切って手を動かさせたほうが、参加者は自分の業務にどう応用できるかを体感しやすくなるはずです。
Baggili氏は、Claude Codeが実装より前の「問題を探索する」工程で特に強みを発揮すると気づいたとされています。
非エンジニアの参加者にいきなりコードを書かせるのではなく、既存の業務資料や要件を読み込ませて整理させるところから始めると、技術的な知識がなくても成果を実感しやすくなります。
全社にAIツールを展開する際、集合研修の講師を毎回用意するのは負担が大きい作業です。
CLAUDE.mdに研修シナリオを書いておけば、講師がその場にいなくても、Claude自身が受講者を次のステップへ誘導してくれます。
研修資料を作り直す代わりに、一度設計したCLAUDE.mdを部署ごとに使い回せるようになります。
提案書や技術仕様書のドラフト作成は、若手が時間をかけて仕上げる定番業務です。
PwCの研修課題と同じように「たたき台をClaude Codeに書かせてから人が仕上げる」流れに変えると、ドラフト作成にかかる時間を圧縮できる可能性があります。
まずは実際の提案書の骨子を読み込ませ、抜け漏れを指摘させるところから試すのが取り組みやすいはずです。
COBOLやAS400のような古いシステムは、仕様書が残っていないことも珍しくありません。
Claude Codeにソースコードを読み込ませて「このプログラムは何をしているか」を説明させると、ドキュメントが存在しない状態からでも、現状把握の土台を作れる可能性があります。
ここでの成果物はコードそのものではなく、非エンジニアの経営層にも読める分析レポートになる点がポイントです。
「AI研修をしたが現場で使われない」という悩みはよく聞かれます。
PwCの事例が示しているのは、研修の最後に参加者へ「持ち帰れる成果物」を渡すことの重要性です。
研修の締めくくりに、各自の実務に近い課題を1つ用意し、その場で成果物を作らせて持ち帰ってもらう設計にすると、翌日から使われる確率が上がるはずです。
CLAUDE.mdを作成し、「あなたは研修のガイド役です。参加者がセッションを開始したら、まず○○について尋ねてください」のように、Claudeが自発的に次の行動を提案する指示を書くCLAUDE.mdに指示を詰め込みすぎると、かえってClaudeの案内が冗長になり、参加者が「結局何をすればいいのか」を見失うことがあります。
研修用のCLAUDE.mdは、通常の開発プロジェクト用のものより思い切って簡潔に書いたほうがうまくいきやすいはずです。
また、1時間という短さは「体験させる」ことには向いていますが、それだけで実務に定着するとは限りません。
PwCも研修単体で終わらせず、Claude Codeをスキルやプラグインの形に体系化し、継続的に使われる仕組みづくりに取り組んでいるとされています。
研修はあくまで入口であり、その後のフォロー体制まで設計しておく必要があります。
PwCの事例が示しているのは、Claude Codeを使いこなせるようになるまでの学習コストを、CLAUDE.mdという仕組みでどこまで圧縮できるかという実験です。
1時間・400人という数字自体は自己申告であり、そのまま真似できる保証はありません。
それでも、「講師が説明する」のではなく「Claude自身が参加者を導く」という設計思想は、規模の大小を問わず応用できる考え方です。
まずは自社の定番業務を1つ選び、CLAUDE.mdに簡単なガイド役の指示を書くところから試してみてください。